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産業医を選任する義務の発生基準とは?注意点を含めて徹底解説!

職場において、従業員の健康管理等を効果的におこなうためには、医学に関する専門的な知識が必要不可欠です。

そのため、常時50人以上の労働者を使用する事業場は、産業医を選任し労働者の健康管理等をおこなうことが法律で定められています。

本記事では、産業医を選任するにあたって、抑えておくべきポイントや注意点を解説します。


目次[非表示]

  1. 1.産業医を選任する目的
  2. 2.産業医の選任が義務になる要件とは?
  3. 3.労働者の人数によって選任すべき産業医が変わる
  4. 4.産業医選任後の注意すべきポイント2つ
  5. 5.従業員の健康と企業の生産性向上のため、自社にあった産業医の選任を


産業医を選任する目的

産業医を選任することで、以下のようなメリットが得られます。

  • 労働者の健康管理に役立つ
  • 衛生教育などを通じ、職場の健康意識が向上する
  • 職場における作業環境づくりに大きく役立つ

産業医の取り組みにより従業員の健康保持の増進や、企業の生産性の向上、優秀な人材確保などにつながるため、将来の企業価値向上も見込めます。

産業医の選任は、健康で活力のある職場づくりに大いに貢献するでしょう。


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産業医の選任が義務になる要件とは?

産業医には「専属産業医」と「嘱託産業医」の2種類があります。

会社の規模によって産業医を選任する義務が発生し、選任する産業医が「専属」なのか「嘱託」なのかは従業員の人数によって変わってきます。

また従業員が多い企業の場合、産業医の人数も違ってくるため、詳しく見ていきましょう。


従業員の人数によって選任義務が発生する

労働安全衛生法では、労働者が50人以上の事業場は事業者に対して産業医を選任することを義務付けています。

義務が発生する事業場とは、同じ場所で作業をおこなう作業所のことで、違う場所で作業している作業場は別としてみなされます。

同じ企業であっても事業所が違うなら、それぞれの事業所で働いている労働者の人数が産業医の選任義務の基準です。

注意点として、50人の中にはパートやアルバイトなどの短時間労働者や会社と契約している契約社員の雇用者だけでなく、会社に派遣されている派遣社員も含まれていることを覚えておきましょう。

また労働者が1,000人以上いる大規模な事業所の場合には、専属の産業医を選任する必要があります。


選任すべき産業医の人数

事業者は常時使用する労働者数に応じて、以下の人数の産業医を選任し労働者の健康管理等をおこなう必要があります。

労働者が多くなるほど産業医の業務量が増えるため、選任する産業医の人数も変わってきます。

以下は常時使用する労働者数別の産業医の人数です。

【画像】産業医 選任

引用:東京都医師会「産業医とは」

また労働者が50人未満の事業場では、産業医の選任義務はありません。

しかし従業員の健康保持のため、医師等に産業医の役割を担ってもらうことが努力義務とされています。


有害業務に携わる業種での選任義務

労働安全衛生規則に記載されている、有害物質を扱う業務に常時500人以上の労働者を従事させる事業場では、その事業場に専属の産業医を選任しなければいけません。

有害業務とは以下の業務を指しています。


  • 多量の高熱物体を取扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
  • 多量の低温物体を取扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
  • ラジウム放射線、X線その他の有害放射線にさらされる業務
  • 土石、獣毛等の塵埃又は粉末を著しく飛散する場所における業務
  • 異常気圧下における業務
  • 削岩機、鋲打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務
  • 重量物の取扱い等重激な業務
  • ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
  • 坑内における業務
  • 深夜業を含む業務
  • 水銀、砒素、黄燐、塩素、塩酸、硝酸、一酸化炭素、二酸化炭素などその他これらに準ずる有害物質のガス、蒸気、又は粉塵を発散させる場所における業務
  • 病原体によって汚染のおそれが著しい業務
  • その他厚生労働大臣が定める業務

引用:厚労省「産業医について」


上記に該当する業務をおこなっている場合は専属の産業医の選任が必要になりますので、確認しておきましょう。


労働者の人数によって選任すべき産業医が変わる

事業場の規模によって、選任すべき産業医は「嘱託産業医」か「専門産業医」か違ってきます。

それぞれの産業医はどのような違いがあるのか、詳しく解説します。


嘱託産業医を選任する企業

事業所の人数が常時50人以上で999人以下の労働者を使用する事業場で選ぶべき産業医は、嘱託産業医です。

事業場の規模や業務内容によって異なりますが、嘱託産業医は一般的に月に1回〜数回程度依頼された日に事業場へ訪問し、産業医の業務をおこないます。

そのため、日頃病院やクリニックで患者の治療をしている開業医や勤務医が日常診療の傍ら、産業医の仕事を担っていたり、他の企業と兼任したりしながら業務をおこなって行っているケースが多いようです。


専属産業医を選任する企業

専属産業医を選任しなければならない企業とは以下のとおりです。

  • 常時1,000人以上の労働者を使用する事業場
  • 有害業務に携わる事業場で常時500人以上の労働者を使用する事業場


専属の産業医は月1回から数回程度、要望があった日に企業に訪れる嘱託産業医とは違い、企業と契約を結び常勤で産業医の業務をおこないます。

また通常は企業専属で産業医の活動をするため、複数の事業場を掛け持ちすることはありません。

さらに、専属産業医は常勤で事業場に所属しているため勤務時間の多くを事業所内で過ごすことになります。

より企業内部の事情が分かるため、従業員の様子や職場環境などを把握しやすく早期対応が期待できるでしょう。


選任する産業医を探す方法は?

産業医は医師であり、以下のいずれかの要件を備えた者から選任しなければいけません。


  1. 厚生労働大臣の指定する者(日本医師会、産業医科大学)がおこなう行う研修を修了した者
  2. 産業医の養成課程を設置している産業医科大学又はその他の大学で、厚生労働大臣が指定するものにおいて当該過程を修めて卒業し、その大学がおこなう行う実習を履修した者
  3. 労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験区分が保健衛生である者
  4. 大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、常勤講師又はこれらの経験者

引用:厚労省「産業医について」


以上のいずれかの要件を満たした産業医をどのように探すのか、選任する方法について具体的に解説します。


地域の医師会に相談する

地域の医師会に相談すると、医師会に登録している事業所近隣の産業医を紹介してもらえるでしょう。

その後自社にあった産業医であれば、直接契約を結べます。

しかし医師会は産業医を紹介するのみですので、実際の産業医への依頼や報酬などの費用の交渉は、全て企業が行わなければならないため多くの労力が必要になるでしょう。

また、産業医を変更したい場合には事業者がその旨を産業医に直接伝えなければいけないため、「言い出しづらい、また新たに最初から探し直ししなければならない」などの問題も発生する可能性があります。


健診を依頼している医療機関に相談する

普段、自社の健康診断を依頼している医療機関に相談し産業医を紹介してもらう方法もあります。

多くの従業員が受診している医療機関からの紹介であれば、会社の状態や従業員の状態を理解してもらいやすいでしょう。

もし健康診断で異常が見つかった従業員がいた場合、産業医としての意見聴取も同時に依頼できスムーズな連携が期待できます。

また、もともと契約している医療機関からの紹介であれば安心感もあるため、交渉などもしやすくなるでしょう。


産業医を紹介している会社に相談する

産業医を紹介してくれる人材紹介会社に相談し探す方法も挙げられます。

産業医の紹介サービスは、事業場近くの産業医を探したり、依頼や交渉などをしたりしてくれるため、手間や労力がほとんどかかりません。

また、産業医とのトラブルへの対応や医師との連絡業務、解任や交代時の対応など付帯するサービスによるトータルサポートを受けられます。

さらに人材紹介会社との契約の場合、契約前の段階で医師の情報を提供してもらえることもメリットのひとつ。

契約前に医師の人柄や得意分野などの情報を人材会社経由で知ることができるため、イメージと実態の差が少ないでしょう。


地域産業保健センターを活用する

原則として、労働者50人未満の事業場を対象に、身近なところで産業保健サービスを無料で提供している地域もあります。

郡市区医師会が運営しており、以下のようなサービスがあります。

  • 健康診断結果に基づく医師からの意見聴取
  • 脳・心臓疾患のリスクが高い労働者に対する保健指導
  • メンタルヘルス不調の労働者に対する相談・指導
  • 長時間労働者に対する面接指導


地域産業保健センターは、労働者50人未満の産業医の選任義務がない事業場を対象に設置されています。

労働者50人未満の事業場には選任義務はありませんが、努力義務として産業医の活用がすすめられています。

労働者の健康を守るためにも産業保健サービスの活用を考えてみるのもおすすめです。


産業医選任後の注意すべきポイント2つ

産業医を選任するにあたって、注意すべきポイントは以下の2点です。

  • 選任義務が生じてから14日以内に産業医を選び届出をする
  • 選任義務を果たさない場合には罰則もある

それぞれを詳しく解説します。


ポイント①選任義務が生じてから14日以内に産業医を選び届出をする

労働安全衛生規則によると、企業は産業医の選任が必要になったタイミングから14日以内に産業医を選任しなければいけないと定められています。

産業医の選任後、所轄の労働基準監督署に遅れることなく選任届を出さなければいけません。

また、現在の産業医が退任し新たに他の産業医を選任する場合でも同様に、届出を提出する必要があります。


ポイント②選任義務を果たさない場合には罰則もある

労働安全衛生法第13条1項では、「事業所は、規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し労働者の健康管理等を行わせなければならない」とされています。

上記を守らなければ法律違反となり、50万円以下の罰金を科せられる可能性があります。

罰則があるからという理由だけでなく、従業員の健康や企業の社会的立場を守る面でも義務を果たすようにしましょう。


従業員の健康と企業の生産性向上のため、自社にあった産業医の選任を

産業医がおこなう業務は、労働者の健康障害の予防や心身の健康保持・増進などと幅広いです。

産業医を選任し労働者の健康管理をしっかりおこなえば、将来的に企業の生産性の向上や優秀な人材の確保なども期待できます。

自社にあった産業医を選び、労働者を大切にした職場づくりをおこなっていきましょう。


産業医を選ぶ際のポイントについては、以下のお役立ち資料で詳しくご紹介していますのでぜひご覧ください。

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mediment(メディメント)は、従業員のあらゆる健康データを一元管理し、産業保健業務の効率化を支援するクラウドシステムです。 クラウドシステムならではの多彩な機能で、あらゆる業務のペーパーレス化を実現し、従業員のパフォーマンス向上に貢献します。

監修者情報

三浦 那美(メディフォン株式会社産業看護師/第一種衛生管理者)

看護師として大学病院の内科混合病院にて心疾患や糖尿病、膠原病などの患者対応業務に従事。その後、看護師問診や海外赴任向けの予防接種を行っているクリニックに転職。これら医療機関での経験を通じ、予防医療やグローバルな医療提供の重要性を感じ、メディフォンに入社。現在は、産業看護師として健康管理システム「mediment」のオペレーション業務やコンテンツ企画を担当。

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